旧春日部市役所
庁舎
旧春日部市役所
庁舎
完成:1970年
設計:高橋武士,建築モード研究所
場所:埼玉県春日部市(現存せず)
戦後モダニズムは様々な方向へ発展しましたが、その一例を紹介します。旧春日部市役所庁舎は正面のガラスカーテンウォールと曲面的な造形が特徴です。装飾的なタイル張りも用いられていますが、あくまで造形的な意匠にこだわっている点ではモダニズムの範疇に収まっていると言えます。
絶妙な「反り」の曲面を描く正面部。5階建ての屹立した建物はともすれば威圧感を与えかねませんが、車寄せの屋根を含めた曲線的な意匠とガラス張りの印象によって、頼もしくも親しみやすい役所建築を実現しています。
ガラス張りの裏側は落ち着いた焦げ茶のタイル張りで、人目に付かないところですがこちらも曲面を描いています。その後ろには2階建ての部分があり、こちらは意匠を持たせたコンクリートによる造形が好ましいです。
内部も外観同様、曲線的な意匠とタイル張りによって、市民に対する威厳と柔和さを兼ね備えています。
残念ながらこの旧庁舎は、2024年に完成した新庁舎への移転によって役目を失い、解体され現存しません。実のところあらゆる建築は役割としての寿命があり、その後は保存の価値と意思を持たれたものしか残されません。惜しいことですが、少なくとも本建築を記録に残せたことは良かったと感じています。