完成:1997年
設計:原広司
場所:京都府京都市
外観はガラス張りと化粧コンクリートを基調としつつ、立体的な造形を加えた、ちょっと一言では言い表せない感じ。装飾復興主義であるポストモダンらしさを感じます。
この建築の醍醐味は何と言っても内部空間。ガラスのウォールと天窓に囲われた壮大な吹き抜け空間が圧倒的な開放感を実現しており、ポストモダンらしい多様な意匠がその空間を彩って飽きさせません。
京都駅ビルの見逃されがちな特徴として、0番線の片面ホームに直接面する正面改札を中央に据えた、いわば国鉄式地上駅舎の構造をそのまま踏襲している点があります。正面改札と駅前広場を最短距離で繋ぐコンコースを“谷底”にし、その両サイドを階段状に高くして商業施設やホテル・劇場を配置するという設計によって、駅としての主機能と付随機能を動線レベルで分けながらも、グラデーション的でシームレスな繋がりを実現しています。つまり、100年来の国鉄式地上駅舎を再解釈した究極的な発展形と言えましょう。
京都駅の駅前には京都タワーが建っており、京都駅ビルはこれを“借景”している節があります。古都に建つ先鋭的建築の先輩である京都タワーとの共存は、後述する玄関口としての意識性を強化しているように見えます。
ちなみに、京都タワー自体は1964年完成と古く、設計は意外にも温和な逓信建築を手掛けていた山田守です。
この京都駅ビルへの建て替えに際しては、当然ながら様々な意見が出たようです。しかし、私はこの駅舎はこの都市にとって相応しい建築であると感じています。
京都は確かに伝統と文化を受け継いできた古都ですが、一方で大学生たちがモラトリアムを過ごし、京セラや任天堂が世界に最先端を届け、パン屋さんがたくさんある、保守と革新が共存した現代の都市でもあるはずです。建築を翻ってみても、京都市役所庁舎は様式建築だし、京都議定書の舞台となった京都国際会館はバリバリのジャパニーズ・モダニズムです。その時々の最新の建築思想を取り入れてきたのであれば、駅がポストモダンなのもむしろ自然なこととすら思えます。
古都というイメージを持たれがちな京都の玄関口としてこの駅舎と京都タワーが迎えてくれるのは、この街の本質を体現しているように思われます。