旧帝国ホテル
(正面玄関)
(正面玄関)
完成:1923年
設計:フランク・ロイド・ライト
場所:愛知県犬山市(明治村移築)
1920年代にコルビジェと並んで活躍した建築家、フランク・ロイド・ライト。型にはまった様式建築を脱し機能を重視した大胆な空間配置は確かにモダニズム建築のそれですが、一方ライトは装飾を否定しませんでした。むしろ芸術品かのような、合理性の対極にある“理解できない”意匠を細部に至るまで施したライト建築は、「もう一つのモダニズム」、もしくは「最後の様式建築」とでも言うべき独特の魅力を持っています。ライトの国内代表作である旧帝国ホテルは正面玄関のみ明治村に移築保存されています。
外観はシンメトリーで、タイル張りをベースに、ライトが好んだ建築材料である加工性に優れた大谷石の彫刻のような意匠が数多見られます。様式建築のような格調を備えつつも、角の取れた大谷石と優しい色合いのタイルが威圧感を除くことに成功しています。また、屋根から「軒」にかけての造形は日本建築を思わせるオリエンタルな雰囲気もあります。
内部は外観と同じタイルと大谷石により構成された幾何学的な空間となっています。吹き抜けが開放感を演出している一方で、階高は低めで中2階のようなフロアレベルと回廊型の動線の組み合わせにより、階段で上の階に行くのに抵抗感が無いつくりを実現しています。
照明器具を含め細部まで徹底された複雑な図形的紋様的意匠はライト作品の真骨頂。特に柱に備えられた照明をかざすテラコッタの造形などはもはや言語化できない感性の芸術の域であり、モダニズムに分類されながらも特異な位置を占めるライト作品の本質の一角と言えます。
入口上部の2階フロアは喫茶室として営業しており、建築意匠を眺めながら一服することができます。コーヒーカップもライトのデザインです。
ちなみに、世界中の建築物のミニチュア模型を展示している東武ワールドスクウェアでは、旧帝国ホテルの全体模型を見ることができます。在りし日の壮大な完全形に思いを馳せてみるのも良いです。